INTERVIEW

2014.02.13

Kan Sano

2月、澄んだ空気に寒空は晴れて、日中の太陽は余計に暖かく感じる、日陰は凛として思わず肩がこわばる、夜は星がきれいに見えるが早く春が来ないかと期待したりしながらジワっと気持ちを熱くしたり、、、そんな季節にリリースされたKan Sanoのニューアルバム『2.0.1.1.』。 ちょっとした日常の感情の起伏すら表すかのような繊細なピアノ、確かな存在感を印象づけるビート感と本人をはじめ様々な海外ゲストボーカルが歌うメロディーが見事に融合し、絶妙なマーブル模様を描いている素晴らしい作品。今日はそのプロモーションで静岡のラジオ局や新聞社を回り取材を受ける本人に同行しながら、その日の最後にGROOVE LINKSのインタビューを。 アルバムの事はあえて控えて、Kan Sanoという音楽家の人間性を少し探ってみました。

今日は一日お疲れさまでした!
早速インタビューですが、今日のようなプロモーション活動はある意味で音楽を作る、演奏する事とはまた別の活動になりますが、やっていてどうですか?

K:基本的には自分は音楽を作る事しか出来ない人間ですし、プロモーションとか作品をリスナーに届ける作業はレーベルスタッフがあってこそですが、自分でやれる事は出来る限りやるようにしています。

その活動が作品に影響する事はありますか?

K:それが直接自分の次の音楽に影響するかはわかりませんが、いろんな現場の人の意見を聞けるのは楽しいですね。刺激になります。

今日の他の取材でも、『2.0.1.1. 』という今回のアルバムタイトルについての話題がありました。震災のあった2011年への想いがあり、このタイトルになったと言っていましたが、3.11を境に音楽活動をする上で変わった事ってありますか?

K:自分の音楽を、、、作品を作って終わりじゃなくて、それを沢山の人と共有したいという想いが強くなりましたね。それが2011年以降の心境の変化だと思います。自分に出来る事って何かって考えた時に、やっぱり僕には音楽を作って発信するってことしか出来ないので、それをちゃんとやって、ポジティブなモノを多くの人に届ける事、もともとそういう想いはありましたが、より強くなったというか。

より受け手の事を考えるようになった?

K:そういうことですかね、、、まぁリスナーを意識して自分の音楽を変えるってわけではなくて、最終的には自分の気持ちいいと思うモノ、納得のいくモノを作るだけなんですけど、でも作って終わりじゃなくて、その後ちゃんと皆に届くまで見届けたいって想いはありますよね。
震災の後、翌年からかな?ピアノ曲を作るようになって、、、
ここ数年はクラブシーンで活動する事が多くてピアノライブは休みがちだったんですが、また再開するようになって。 下北沢に「lete」ってキャパ20人ぐらいのライブ小屋があるんですけど、そこで今は定期的にやっていて、客さんが凄く近いんですよ。もう息の音も聴こえるくらいの距離なんですけど、それがけっこう楽しいんですよね。ダイレクトに音が伝わるし、ライブの前後とかお客さんと飲みながら話したりして、そういうのが凄く楽しくなりましたね。

音楽キッカケのコミュニケーションですね?

K:そうですね。もともと人見知りだし、そんなに自分からしゃべるタイプじゃないんですけど、そう考えると音楽は自分にとってコミュニケーションツールなのかもしれません。

音楽自体は小さい頃から始めてたんですか?
最初に音楽に触れたのっていつ頃ですか?

K:音楽に触れたのは、、、小学校5年の夏にミスチルのイノセントワールドのシングルCDを初めて買って、、、そのあとビートルズをすぐ聞くようになって、中学の3年間はずっとビートルズの全アルバムをひたすら聴いていましたね。そのあと高校ぐらいからジャズとかR&Bとかネオソウルとかブラックミュージック全般に入っていったんですけど。

やるほうは?

K:聴くようになって直ぐやるようになったというか、だからビートルズを聴いて、自分も彼らみたいに曲を作って歌ったり演奏したいと思って、そこからスタートしたんで、当時は楽器も弾けない、コードも知らない、譜面も読めないんですけど、見よう見まねで始めたって感じですね。

最初の楽器は?

K:ピアノとギターです。

同時に2つに手を出したんですね?

K:そうですね。家にあったので。押し入れからフォークギター引っ張り出してきて。

じゃあ、その頃から友達とバンドを組んだり?

K:小中の頃は周りに同じような音楽を聴いている人がいなかったので、学校から帰って家で一人で作曲してラジカセ2つ使ってピンポン録音みたいな事をしていました。

そこからもう始まっていたんですね。笑

K:そうですね。笑
今でこそコンピューターで作曲作業もレコーディングもしてますけど、ルーツはラジカセのピンポン録音ですね。

じゃあ、その頃からミュージシャン志望で、それがずっと続いて今ですか?

K:そうですね。それは一度も変わらなかったですね。中学の時には、音大に行って将来はミュージシャンになると決めていました。

高校時代は?

K:高校は普通校で、しかも進学校に行ってしまって、だから馴染めなかったですね、、、笑 その頃は地元の大学のジャズ研の人たちや色んなミュージシャンと繋がり始めていて、一緒にライブやったりバンドやったりしていて。学校の外での活動は充実してましたけど、音楽と学校は全く別モノでしたね。

それで、実際に名門バークリーに行く訳ですが、不安はなかったですか?

K:まぁありましたけど、気持ちとしてはとにかく新しい音楽に出会ってそれを学びたいって、もうそれだけでしたね。音楽の事だけしか考えてなかったと思います。笑

もうどっぷり音楽人生ですね。笑
そんな学生時代の衝撃的な一枚(アルバム)とか、アーティストとか、ありました?

K:やっぱり挙げるとしたらビートルズとマイルスデイヴィスが最初に出てきますね。
マイルスは高一の時に初めて聴いたんですけど、それが「Bitches Brew」で。
あれを何故か一枚目に聴いてしまって。笑
でもその入り口が正しかったと思いますね。高一の夏だったんですけど、地元のタワレコで買ってきて、ヘッドホンで爆音で聴いたら、、、凄くて、、、あれはちょっと忘れられないですね。今でもあの時の感動は覚えています。

当時はブラックミュージックも聴き始めでジャズもそんなに知らなかったし、ファンクって言葉も知らなかったけど、とにかく何だコレは!?って感じで、強烈な衝撃を受けましたね。
あとはハービーバンコックの「Head Hunters」。あれも同じ時期に聴いて、かなり影響を受けました。

Kanさんの音楽を聴いていると、僕は特にリミックスやビートトラックから聴き始めたので、ヒップホップというかブレイクビーツのイメージがありますが、ヒップホップとの出会いというか、影響を受けた事は?

K:うーん、それこそ20代になってビートメイクをするようになってから、いろいろ聴くようにはなったんですけど、もともとはネオソウル、ディアンジェロとかエリカバドゥを高校の頃から聴いていたんで、その周辺のクエストラブとかジェイディラとかですかね。
10代の頃は意外とヒップホップは通ってなかったですね。それよりは20歳以降新しいビートを探して行く中でビートシーンに入って行ったって感じですかね。

ビートメイカーというと楽器のプレイヤーとはまた別の手法だったり考え方になると思うのですが、Kanさんの場合はプレイヤーからビートメイクに入っていった訳ですよね? それは自然の流れで?それとも何かキッカケがあって?

K:楽器のプレイヤーとビートメイカーやDJ側の人って聴いているポイントが違うと思うんですよ。僕はもともとずっとプレイヤーとしてやってきているんですけど、そのプレイヤー的な視点に違和感はずっとあったんですよね。バンドやっていても皆と聴いているところが違うなと思っていて、それが何なのかって考えると自分の聴き方がDJやビートメイカー的な視点なんですよね、たぶん。だからビートメイクを始めた時に妙にしっくりきて。あ、コレだ、ってなりましたね。

ちなみにビートメイクする時の機材は何を使っているんですか?

K:ずっとCubeaseって音楽ソフトを使っていて、SP404とかMPCも一応持ってますけど、サンプラーはそんなに使わないですね。 やっぱりもともとプレイヤーとして始めているので、パッドを叩くというよりは鍵盤を弾いて作り始めることが多いです。

鍵盤も打楽器(リズム楽器)だっていう考え方もありますよね?

K:そういう意味では昔からリズムに関しての意識は強いと思いますね。ハーモニーにしてもそうですけど、新しいリズム、ビートを探してずっとやってきたって感じですね。
だからヒップホップとかクラブジャズを聴き始めたのも、まだ自分の知らない音楽を模索する中で聴いてきた感覚が強いですね。

なるほど。Kanさんは常に新しいものを探求しているんですね。
今回のアルバムもそういう意識で作ったんですか?

K:今回のアルバムに関してはまたそういう感覚とは少し違って、
えーっと、、、
最初はこのアルバムを作る前にもともと別のアルバムを作ろうとしていて、それはもっとビートよりというか、ファーストアルバムのやり方の延長で作ろうとしていたんです。何となくイメージもあったんですけど、ちょうどその時期にフライング・ロータスの「Until the Quiet Comes」がリリースされて、聴いてみたら自分がその当時やろうと思っていた事が最高のカタチで実現されていて、それでけっこう打ちのめされて、これはもうヤられたなって感じで、、、

で、その時考えてた事は一回白紙にしたんです。どういう事が出来るか解らなくなってしまって。
それからソロピアノのアルバムを自主で作ったりとかして、そのアルバムの事は一旦忘れてたんです。
そんな中でorigami PRODUCTIONSの対馬さんとミーティングするようになって、アルバムの方向性を決めていったんですけど。
今回は新しいモノって言うよりは、もともと自分が持っている2つの、プロデューサーとしてのキャラクターと、ピアニストとしてのキャラクターを自分なりのやり方で、まだ聴いた事のないバランスでブレンドできれば、結果的に何か新しいモノになるんじゃないかと思って。
だから純粋に自分が気持ち良いと思えるモノを素直にひねらずやっていこうかなと、それが今回のアルバム制作にあたって最初に決めたことです。

うーん、なるほど。それで実際にアルバムの曲には様々なゲストシンガーがフィーチャリングされていますが、それはどういった流れで決まったんですか?

K:順番でいうと曲が先にあったり、ゲストが先だったり、いろいろですが、前々から一緒に作ってみたかった人たちに声をかけていった感じですね。

シンガーとなるともちろんそこには歌詞がある訳ですが、プロデューサー的な立場から歌詞の内容を指示する事もあるんですか?

K:多少はありますけど、基本的にはお任せですね。
頼んだシンガーさんを信用して、あくまでポジティヴなモノを作りたいって事だけ伝えて。
マンデーさん(Monday満ちる/Here and Now)の場合はどういう内容にしようかと相談を受けて、それで僕も考えて話しましたね。

どんな内容だったんですか?

K:その時伝えた事をそのまま言うと、季節は春で、天気は快晴で、朝で、命やエネルギーの循環、川から海へ流れて、雲になってまた雨になって、というような、生命の循環をテーマに、それをポジティヴに歌って欲しい、そう伝えましたね。

曲もPVもそのテーマ通り、壮大なイメージが見事に表現されてますよね。
少し話がそれますが、他の海外ゲストも含めメールのやり取りやインターネットを使って場所を飛び越えて一緒に作品が作れたり、そもそもネット上が出会いの場であったり、片や音楽業界ではCDが売れなくなったり、フォーマットの変化も含めいろんな事が変わって来ました。 そんな今の時代に思う事はありますか?

K:今って、手軽に物が手に入るし、音楽も聴けるし、それはそれで良い事でもあるんですけど、その分感動が薄くなった気がしますよね。
例えば昔はジャケ買いとかして、当たり外れはあるけど、当たった時の感動や衝撃は凄かったり、今はYouTubeで大体視聴出来ちゃいますから、そういう機会が少なくなってるようには思いますね。
だから、今は今のやり方で何か面白いアプローチが出来ないかと考えたりもします。
先日六本木のTSUTAYAに行ったら、音楽のジャンル別けは全く無くしてあって、年代別にすべてのCDが並べてあったんですよ。
自分の中ではビートルズもヘッドハンターズも頭の中では年代順に並べてあるんですけど、それが実際に並んでるのを見ると楽しくて。音楽との新しい出会いの形を提供していて素晴らしいなと思いました。

売る方もいろいろと考えますよね。
そういう意味では今は今なりの音楽との出会い方があるかも知れませんね。
ダウンロードにしろストリーミングにしろ、スマートフォンの中で完結する衝撃的な出会いも今の若い子達にはそれが普通であるかもしれない。

K:そうですね。SoundCloudなんかはミュージシャンからしても、作った曲をその日のうちに公開出来て、世界中の人に聴いてもらえるし、リアクションも見れる。 凄いですよね。

僕もリスナーとして使っていますが、たまたまその瞬間にアップされたトラックを聴き始めるとき、再生回数が0から徐々に上がって行くのを見ながら今までに無い新しい感覚だなと感心しました。


K:音楽の聴き方自体が変わって来てますよね。
昔はヒットチャートに100万枚ヒットが一杯あったのが今はどんどん減って来ていますけど、それで良いんじゃないかと思いますね。
そんなに多くの人が一つのモノを聴いてるって、、、本当はもっといろんな音楽を聴いてる人がそれぞれいるはずで、マイノリティーだとしても日本に限らず世界的に見ればそれぞれいろんな音楽を楽しんでるファンがいますからね。
ミュージシャンとリスナーもそうだし、リスナー同士も、ミュージシャン同士も、そういう横の繋がり的なモノはインターネットのおかげで繋がりやすくなりましたよね。

やはり海外への目線は意識してますか?

K:何と言うか、それが当然の事になってますね。やっぱりSoundcloud始めた時も日本より海外からの反応のほうが凄く多くて、英語のメールとか、今もよく届きます。 だから意識するというよりはそれが普通というか。

逆に、今の日本の音楽業界をどう思いますか?

K:メジャーシーンを見ているとやっぱり遅れている気がしますね。フォーマット含め売り方が保守的というか、過去の財産じゃないですけど、ベスト盤やカバーが多かったり。 クリエイティブな発想が感じられないですよね。

音楽自体はクリエイティブなモノだから売る側もクリエイティブでなければならないですよね。
所属しているorigami PRODUCTIONには、音楽性はもちろん、プロモーションのやり方などクリエイティブなモノを感じます。

K:そうですね。そこは僕も凄く共感している部分で、これだけ時代がどんどん変化して行く中で、自分達に何が出来るのか常に考えているレーベルだと思います。大きなお金を使って派手にプロモーションって感じでは無いですけど、インディーズだからこそ自由な発想で色々出来る余地があって、可能性は凄く感じています。

まさしく。今後も良い音楽をどんどん発信して行って欲しいですね。
例えば、レーベルだったら良いモノを発信して行く上で、先ずそれを選ぶいろんな基準があると思いますが、Kanさん自身が自分の音楽に対して「カッコいい」とか「素晴らしい」と思う基準ってありますか?

K:うーん、難しいですね、、、まぁ自分の基準って意味でいうと、マイルス・デイヴィスとジャイルス・ピーターソンに自信を持って渡せる作品。

おお、なるほどね!笑

K:そこは譲れない基準ですね。笑
どういうジャンルの音楽をやったとしても、「コレが自分のやってる音楽です!」って彼らに自信を持って渡せる作品を作っていきたいですね。

最後に、Kan Sanoにとって音楽とは!?

K:曲を作って、演奏してってのはもう生活から切り離せないですからね、なかなか改めて音楽とは?っていうと難しいんですけど、、、
自分にとっては欠かせないモノだし、うーんなんだろう、、、
自分の考え方とか、思っている事、その時の生活環境や精神状態とかいろんな要素が、自分でも意識してないところで入り込んでしまうのが音楽ですよね。だから自分の分身といっても良いかもしれないし、その時の、その瞬間の自分の記録ですよね。そう考えると凄くプライベートなモノですよね。

Kanさんは本当に人生と音楽が密接しているんですね。
今回はいろいろと聴かせていただき、ありがとうございました!
これからも素敵な音楽を発信し続けて下さい!

 

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